サムネアキラ完成.png

【本教材の概要】

本教材の概要.png

本教材は、一言で言えば「マーケティングにおける『カルト化』の技術書」です。教科書としたのは、ベストセラー『カルトブランディング』です。

81zfrzh7kdL._SL1500_.jpg

ビジネスにおいて、多くの人が陥る罠があります。
それは「良い商品を作れば売れる」「正しいことを言えば伝わる」という思い込みです。
しかし現実は残酷です。どんなに高品質な商品でも、どんなに正論を並べても、人の心が動かなければ1円にもなりません。

この教材は、そんな「真面目ゆえに損をしている人」や「機能やスペックで勝負して疲弊している人」のために作りました。

ここで語られるのは、顧客を単なる購入者から、あなたのブランドを熱狂的に支持し、布教してくれる「信者」へと変貌させるための具体的なメソッドです。
「教祖」と「信者」の関係性をビジネスに応用し、競合他社が入り込めない強固なコミュニティを築く方法。
それを、物語形式でわかりやすく解説したものです。

【本教材を作った理由】

【本教材を作った理由】.png

私がこの教材を作った理由はシンプルです。
あなたに「ただのお客さんを信者に変える方法」を伝授したかったからです。

世の中には、素晴らしい技術や知識を持っているのに、それを「伝え方」のせいで台無しにしている人があまりにも多いと感じています。
謙虚さは美徳ですが、商売においては時に足かせとなります。

「もっと自分をさらけ出していい」
「もっと尖った主張をしていい」
「もっと熱狂させていい」

そう背中を押すことで、あなたのビジネスが劇的に変わる瞬間を見たい。
その一心で、この「カルトブランディング」の奥義を公開することに決めました。

【本教材を読むと、あなたはどうなるか？】

本教材を読むと.png

この教材を手に取り、読み終えた時、あなたは以下のベネフィットを手にしているでしょう。

・熱狂的な「信者」を量産できるようになります
顧客との関係性が劇的に変わります。単にお金を払うだけの人ではなく、あなたの思想に共鳴し、応援してくれる味方が増え続けます。

・リピーターが増え、あなたが宣伝しなくても信者が「伝道師」となって広めてくれるようになります
広告費をかけずとも、信者たちが勝手に友人を誘い、SNSで拡散してくれるようになります。これこそが、個人発信者が勝つための最強の戦略です。

・お金にならない「無駄なこと」をしなくて良くなります
誰にでも好かれようとする八方美人の努力や、機能競争による消耗戦から解放されます。あなたは、あなたを愛してくれる人だけに向き合えば良くなるのです。

【なぜ「対話形式」なのか ────本教材の構成について】

【なぜ「対話形式」なのか ────本教材の構成について】.png

本教材は、全編にわたり「主人公マズオ」と「商売の神プロメテウス」の対話形式で構成されています。

なぜ、普通の教科書のような書き方にしなかったのか？
答えは簡単です。
論文のように無味乾燥な事実の羅列では、あなたの頭に入らないからです。

人は物語を通して物事を理解し、記憶します。
主人公の失敗や葛藤に自分を重ね合わせることで、ノウハウは単なる知識ではなく「体験」として深く刻まれます。
だからこそ、あえて対話形式を採用しました。
エンターテインメントとして楽しみながら、気づけばビジネスの本質がインストールされている。そんな体験をお約束します。

【私は目先のお金よりも「信頼」を取る】

【私は目先のお金よりも「信頼」を取る】.png

「これほど強力なノウハウなら、なぜ隠しておかないのか？独り占めした方が得ではないか？」
そう思われるかもしれません。

確かに一昔前なら、有益な情報は金庫にしまっておくのが正解でした。
しかし、その発想はもはや時代遅れです。

現代は「情報氾濫」の時代です。
世界中で情報が溢れかえり、どんなに隠そうとしても、有益な情報はいずれ世に出てしまいます。
情報の希少価値自体が薄れているこの時代において、一番得をする行動とは何でしょうか？

それは、「誰よりも速く、そして惜しみなく有益な情報を出すこと」です。

情報を隠す人は忘れ去られますが、情報を与える人は「信頼」を手に入れます。
そして信頼さえあれば、ビジネスはいくらでもスケールさせることができます。人が集まり、お金が集まり、チャンスが集まるからです。

有益な情報を惜しみなく出し、多くの人から「信頼」を集めた人が、長期的には最も大きな利益を得る。
この構造を理解しているからこそ、私は目先の小銭を追うのではなく、あなたからの信頼を得るために、今回この有益な情報を全て公開することにしました。

【全目次について】

全目次.png

以下に本教材の有料部分も含む「全目次」を公開しています。
これは単なる章の羅列ではなく、中身がおおよそわかるレベルまで詳細に記したものです。

一般的な情報商材やビジネス書では、目次が抽象的だったり、肝心な部分が隠されていたりすることがあります。
それでは、買った後に「思っていたのと違った」というミスマッチが起き、あなたが損をしてしまいます。

私はそのような不誠実なことはしたくありません。
中身がわかるほどの詳しい目次をすべて公開します。
これで、あなたが内容に納得した上で、安心して手に取っていただけると確信しています。

というわけで、まずは、さらっと全目次をご覧になってください。

☑️全目次

【本教材の概要】
【本教材を作った理由】
【本教材を読むと、あなたはどうなるか？】
【なぜ「対話形式」なのか ────本教材の構成について】
【私は目先のお金よりも「信頼」を取る】
【全目次について】
☑️全目次
あらすじ
【登場人物の紹介】
【本教材の全体像】
10-1. 【漫画で全体像をサクッと】
【本編開始】
プロローグ：泥酔と借金と、怪しい老人の出現
12-1. ☆東大院卒のプライドと、苦々しい現実
12-2. ☆夢か現か、商売の神「プロメテウス」降臨
第1部：なぜ、お前の「正しい情報」は誰にも響かないのか？（カルトブランディングの定義）
第1話：正論バカの悲劇
14-1. ☆「良いものを作れば売れる」という大いなる勘違い
14-2. ☆機能やスペックで勝負するな、意味で勝負せよ
14-3. ☆カルト宗教とカルトブランドの共通点とは？
第2話：マス（Mass）を捨てろ、ニッチを掘れ
15-1. ☆「全員に好かれたい」が命取り
15-2. ☆平均的な商品は、誰の記憶にも残らない
15-3. ☆ターゲットを絞るのではない、「信者」を見つけるのだ
第3話：カルトブランディングの3要件
16-1. ☆お前のブランドに「自分らしさ」を感じるか？
16-2. ☆顧客ではなく「伝道師」を作れ
16-3. ☆破壊的カルトと健全なカルトの違い
第2部：現代人が渇望する「つながり」と「居場所」（時代背景と必然性）
第4話：孤独な現代人と、お前の無味乾燥なコンテンツ
18-1. ☆なぜ人はコミュニティを求めるのか
18-2. ☆Z世代が求めているのは「モノ」ではなく「イデオロギー」だ
18-3. ☆広告はもはや「ノイズ」でしかない
第5話：情報の透明化と「嘘」の代償
19-1. ☆バレる嘘、盛った経歴、そして失われる信頼
19-2. ☆マズオの「権威性」が逆効果な理由
19-3. ☆「人間味（ヒューマンタッチ）」がない情報は死んでいる
第3部：信者を生み出すための「7つの聖なるキーワード」（実践キーワード編）
第6話：【イデオロギー】お前の「正義」はなんだ？
21-1. ☆ただのノウハウ屋になるな、思想家になれ
21-2. ☆「教養としての経営思想」がつまらない決定的理由
第7話：【異端児】常識を疑い、タブーを犯せ
22-1. ☆優等生である必要はない
22-2. ☆業界の「悪しき慣習」に中指を立てろ
第8話：【敵】仮想敵を設定し、怒りを共有せよ
23-1. ☆「敵」がいなければ「味方」も生まれない
23-2. ☆マズオが戦うべき相手は誰だ？
第9話：【愛】顧客への愛が足りていない
24-1. ☆お前は読者を「ATM」だと思っていないか？
24-2. ☆愛のないコンテンツは、どんなに正しくてもゴミだ
第10話：【コミュニティ】帰属意識の魔力
25-1. ☆ただの読者リストを「部族（トライブ）」に変える方法
25-2. ☆内輪ネタと共通言語を作れ
第11話：【ストーリー】スペックを語るな、神話を語れ
26-1. ☆お前の失敗談こそが最大の武器になる
26-2. ☆借金9000万は「最強のストーリー」の種だ
第12話：【体験】情報を売るな、体験を売れ
27-1. ☆オフラインとオンラインの融合
27-2. ☆五感を刺激する儀式を作れ
第4部：凡人が「教祖」になるための具体的プロセス（構築ステップ編）
第13話：存在理由（Why）の明確化
29-1. ☆なぜ、お前でなければならないのか？
29-2. ☆金稼ぎ以外の「ミッション」を掘り起こせ
第14話：ペルソナの再設定
30-1. ☆「過去の自分」こそが最強のペルソナ
30-2. ☆たった一人のために手紙を書け
第15話：タッチポイントの設計
31-1. ☆出会いから熱狂までのカスタマージャーニー
31-2. ☆最初の接点で「雷」を落とす方法
第5部：成功事例から盗む「カルトの奥義」（ケーススタディ編）
第16話：スズキ「ジムニー」に学ぶ、不変の価値
33-1. ☆流行を追うな、スタイルを貫け
33-2. ☆機能美と哲学が信者を呼ぶ
第17話：釣具「がまかつ」に学ぶ、現場主義
34-1. ☆徹底的に顧客の「声」を聞け
34-2. ☆顧客と共に商品を創る「共創」の力
第18話：デュオリンゴに学ぶ、ゲーミフィケーションと習慣化
35-1. ☆「学習」を「快楽」に変える技術
35-2. ☆マスコットキャラクターの重要性
第19話：アップルとジョブズに学ぶ、カリスマ性
36-1. ☆「反逆者」としてのブランディング
36-2. ☆洗練されたデザインと排他性
第20話：グレイトフル・デッドに学ぶ、フリー戦略
37-1. ☆コンテンツを無料開放して、なぜ儲かるのか？
37-2. ☆損して得取れの究極系
第6部：マズオの覚醒と再生（実践・応用編）
第21話：プライドの崩壊と、裸の自己開示
39-1. ☆「東大卒」の肩書きを捨てる日
39-2. ☆借金地獄のリアルを発信し始めたマズオ
第22話：最初の「真の信者」が現れる時
40-1. ☆共感が熱狂に変わる瞬間
40-2. ☆アンチすらもエネルギーに変える
第23話：コミュニティの爆発
41-1. ☆読者が勝手に宣伝してくれる「自走する組織」
41-2. ☆マズオが「教祖」になった日
エピローグ：プロメテウスとの別れ、そして伝説へ
42-1. ☆借金完済、そして新たな旅立ち
42-2. ☆カルトブランディングとは、結局「愛」である
42-3. ☆マズオから、画面の前の「あなた」へ
🟦マズオの大いなる飛躍
3年後の再会：天空の執務室にて
44-1. ☆借金まみれのアパートから、雲の上のペントハウスへ
最強の虚像：「西園寺タケル」というアイコン
45-1. ☆生身の教祖を超越した、バーチャルヒューマンの創造
9000倍の運気：「光の輪」と「暗黒鏡」
46-1. ☆ストーリーテリングで付加価値を極限まで高める
900万人の信者：「波動師魔法学校」
47-1. ☆「隠された真実」を暴露する、最強のイデオロギー
選民思想の極致：「黄金の国ニッポン」と「虹色の波動」
48-1. ☆3億円の会費を払ってでも得たい「所属」
神の驚嘆と、マズオの真意
49-1. ☆カルトブランディングとは、世界を再定義すること
🟦マズオ、神にレクチャーする～肉体を捨てた先に待つ、無限の収益モデル～
弟子が師匠を超えるとき
51-1. ☆ネットの利点は「肉体からの解放」にある
51-2. ☆一人の人間が「何百人」もの人生を生きる
感情の生き物、人間
52-1. ☆実在するかどうかは、重要ではない
52-2. ☆商売とは「奉仕（サービス）」である
52-3. ☆次世代の勝者とは
🟦補講：マズオの懐疑～なぜ、胡散臭い領域だけが儲かるのか？コンテンツビジネスの残酷な真実～
胡散臭さへの違和感と、神の回答
54-1. ☆儲かっているのに、なぜかモヤモヤする
構造的理由①：「お堅い層」はネットで情報を買わない
55-1. ☆エビデンス重視層の行動パターン
55-2. ☆発信者側の事情：サラリーマン vs 個人事業主
構造的理由②：ネット住民が求めているのは「夢」である
56-1. ☆根拠がないからこそ、価値がある
構造的理由③：実験すればわかる残酷な現実
57-1. ☆正論記事 vs 怪しい記事
結論：胡散臭さを受け入れ、その中で誠実であれ
58-1. ☆胡散臭さの中にあるグラデーション
🟦お金には限りがあるという貧乏マインドを払拭せよ～信用創造と無限のマネーサプライ、そして尽きることなき欲望～
億万長者の憂鬱
60-1. ☆「稼ぎすぎ」への罪悪感
お金の正体：「有限な物質」ではなく「無限の情報」
61-1. ☆お金は「ある」ものではなく「生まれる」もの
61-2. ☆欲望がある限り、マネーは膨張する
「お金の川」は無数にある
62-1. ☆枯れたら移動すればいい
62-2. ☆コンテンツビジネスという「大河」
マズオの覚醒と、次なる一手
63-1. ☆リミッター解除：神をも恐れぬ商品開発へ
🟦マズオ、商売の真理を滔々と話す～人格の改良よりも、需要の発見に命を燃やせ～
最後の対話：商売人という生き物
65-1. ☆作り手の属性など、誰も気にしていない
65-2. ☆自己啓発の罠：「自分磨き」は本質ではない
65-3. ☆商売人が考えるべき、たった一つの問い
65-4. ☆試行錯誤こそが、商売人の本質
🟩実践テンプレート集～穴埋めするだけで、あなたの「カルトブランド」が動き出す～
66-1. 【Step 1】イデオロギー（旗印）を設計する
66-2. 【Step 2】ストーリー（神話）を構築する
66-3. 【Step 3】コミュニティ（部族）を形成する
66-4. 【Step 4】胡散臭さ（夢）をスパイスにする
66-5. 【Step 5】ABテスト（試行錯誤）の指針
【超濃密なまとめ】カルトブランディングの極意
67-1. 1. 「正しさ」ではなく「意味」を売れ
67-2. 2. 八方美人をやめろ！尖れ！偏れ！
67-3. 3. 「孤独」を救うコミュニティを作れ
67-4. 4. 「胡散臭さ」という魔法を使え
67-5. 5. 自分を変えるな、商品を変えろ
用語集
【おわりに】

あらすじ

1あらすじ.png 2あらすじ.png

3あらすじ.png

・東大大学院を修了しながらも、多額の借金を抱えウーバーイーツ配達員として働く主人公マズオ

・彼のもとに商売の神を名乗る老人プロメテウスが現れる

・プロメテウスはマズオに、顧客を熱狂的な信者に変えるカルトブランディングを伝授し始める

・マズオは自身のプライドを捨て、弱さをさらけ出すことで徐々にファンを獲得していく

・ネットビジネスの真理や、お金の本質について学びながら、マズオはインフルエンサーとして覚醒する

・最終的にマズオは、テクノロジーとカルトの手法を融合させ、巨万の富を築くに至る

・商売の本質とは何か、なぜ人は怪しいものに惹かれるのか、その答えを探す物語

【登場人物の紹介】

プロメテウス
・自称、商売の神。かつて人間に火を与えたとされるギリシャ神話の神
・現代ではiPadを使いこなし、天界からマーケット動向を監視している
・毒舌家で、マズオの痛いところを容赦なく突くが、教えは極めて本質的
・カルトブランディングの奥義を知り尽くした師匠役

マズオ
・36歳。東京大学大学院修了という輝かしい経歴を持つ
・しかし現実は、不動産投資とFXの失敗で借金9000万円を背負う底辺生活
・プライドが高く、高尚な知識をひけらかす癖がある
・有益な情報をと長年メルマガを更新しているが、全く稼げていない
・プロメテウスの教えにより、自身の弱さを武器に変え、商売人として覚醒していく

【本教材の全体像】

1インフォ.png

2インフォ.png

3インフォ.png

4インフォ.png

5インフォ.png

【漫画で全体像をサクッと】

【本編開始】

プロローグ：泥酔と借金と、怪しい老人の出現

サムネプロローグ.png

☆東大院卒のプライドと、苦々しい現実

午前3時。東京の場末、築40年の木造アパートの一室。
六畳一間の部屋には、飲み干されたストロングゼロの空き缶が転がり、コンビニ弁当の容器が山積みになっている。

「……ッ、うぇ」

俺、マズオ（36歳）は、薄汚れた布団の上で寝返りを打ちながら、こみ上げてくる吐き気を必死に抑え込んだ。
頭が割れるように痛い。今日も今日とて、現実逃避のための深酒だ。

枕元のスマホがブブッと震える。
画面を見ると、ウーバーイーツの配達アプリからの通知だった。明日の雨予報に伴うインセンティブのお知らせだ。

「はは……インセンティブ、か。俺が欲しいのは、そんな小銭じゃねえよ……」

俺の経歴を知れば、誰もが驚く。
東京大学大学院修了。在学中には英国への留学経験もあり、TOEICは950点。専門は西洋哲学と経営思想史。
絵に描いたようなエリート街道を歩んでいたはずだった。

それなのに、今の俺はどうだ？
借金総額、9000万円。
原因は、無謀な不動産投資の失敗と、さらにそれを取り返そうとして突っ込んだFXでの大敗。そして何より、「俺なら知識だけで稼げる」と高を括って始めた情報発信ビジネスの赤字垂れ流しだ。

「クソッ……なんでだ。なんで俺のメルマガが売れないんだ」

俺が運営している有料メルマガ『教養としての経営思想』。
月額800円。内容は、ドラッカーやマルクス、ウェーバーといった巨人の思想を現代ビジネスに転用するという、極めて高尚かつ有益なものだ。
毎月、海外の学術書を読み漁り、参考文献だけで10冊は下らない。リサーチにかける費用は月100万円を超えている（借金で賄っている）。

それなのに、有料購読者はたったの3人。
そのうち1人は俺の母親だ。
実質2人。月の売上、1600円。

「バカな大衆には、この高尚なコンテンツの価値がわからねえんだ……」

そう吐き捨てて、俺はまたFacebookを開く。
そこには、かつての同級生たちの輝かしい日常が並んでいた。
大手商社の最年少役員になったアイツ。有名な建築賞を受賞したアイツ。幸せそうな家族写真をアップしているアイツ。

画面をスクロールする指が震える。
嫉妬、焦燥、自己嫌悪。
ドロドロとした感情が胃の腑で渦巻き、俺は再びストロングゼロのプルタブを開けた。

「飲まなきゃ、やってられねえよ……」

意識が混濁していく。
スマホの画面が滲む。
そのまま俺は、気絶するように深い闇へと落ちていった。

☆夢か現か、商売の神「プロメテウス」降臨

ふと気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。
上下左右、奥行きさえもわからない、完全なる無の世界。

「なんだここは……？死んだのか、俺？」

「死んではおらんよ。ただ、お前のビジネスが死にかけているだけじゃ」

突然、背後から声がした。
飛び上がって振り返ると、そこには妙な格好をした老人が立っていた。
ギリシャ彫刻のような筋骨隆々の肉体に、真っ白なトーガ（古代ローマの服）を纏い、右手にはなぜかiPadを持っている。顔はサンタクロースのような白髭で覆われているが、眼光だけは異様に鋭い。

「だ、誰だあんた！不法侵入か！？」

「ここはお前の夢の中じゃよ。不法侵入もなにもないじゃろうて」

老人はiPadを操作しながら、呆れたようにため息をついた。

「わしはプロメテウス。かつて人間に『火』を与え、文明をもたらした神じゃ。ま、現代風に言えば『商売の神』とでも呼んでくれ」

「プ、プロメテウス……？神様がなんでiPadなんか持ってるんだよ」

「便利だからじゃよ。これ一つで天界から下界のマーケット動向まで全て把握できる。便利すぎてゼウスも課金しておるわ」

プロメテウスと名乗る老人は、カッカッカと笑った。
夢にしてはリアルすぎる。それに、この老人が放つオーラは、ただの幻覚とは思えない圧倒的な圧があった。

「で、その商売の神様が、なんの用だっていうんだ。俺は忙しいんだよ、明日の配達の準備もしなきゃならないし……」

「ほう？東大院卒の頭脳を、自転車漕ぎに使うのがお前の『忙しさ』か？」

図星を突かれ、俺は言葉に詰まる。

「……うるさい。今は雌伏の時なんだよ。俺のコンテンツが世間に見つかれば、すぐに億万長者だ」

「カッカッカ！『見つかれば』か。おめでたい奴じゃのう」

プロメテウスはiPadの画面を俺に見せつけてきた。
そこには、俺が徹夜で書き上げた渾身のnote記事『ヘーゲル弁証法から読み解く、現代SaaS企業の生存戦略』が表示されていた。
スキ（いいね）の数は、ゼロ。

「見ろ、この惨状を。誰も見ておらん。これぞまさに『デジタル上のゴミ』じゃ」

「ゴ、ゴミだと……！？」

俺は激昂した。
俺の血と汗と涙の結晶を、ゴミ呼ばわりだと？

「訂正しろ！これは論理的にも完璧で、学術的な裏付けもある最高品質の記事だ！読者がバカだから理解できないだけだ！」

「ほっほっほ、吠えるのう。じゃがなマズオよ、商売において『売れない』というのは、すなわち『価値がない』と同義じゃよ。お前がどれだけ高尚な理屈を並べようが、客が財布を開かなければ、それは独り言に過ぎん」

老人の言葉は、鋭利な刃物のように俺のプライドを切り裂いた。
反論したいが、言葉が出てこない。事実、俺は売れていない。13年間、全く。

プロメテウスは急に真顔になり、俺の目の前まで歩み寄ってきた。
そして、低い声でこう告げた。

「よいか、マズオ。お前が貧乏なのは、コンテンツの質が悪いからではない。お前が『人間』を理解しておらんからじゃ」

「人間を……？」

「左様。お前は情報を売ろうとしておる。だが、人は情報では動かん。人が動くのは『熱狂』じゃ。ただの客を『信者』に変える魔法、それを知らん限り、お前は一生ウーバーのバッグを背負い続けることになるぞ」

「信者に変える魔法……？」

ゴクリ、と唾を飲む音が、静寂な空間に響いた。
怪しい。あまりにも怪しい。
だが、今の俺には、この藁にすがる以外に道はない気がした。

「教えてくれ、じじい……いや、プロメテウス様。その魔法ってやつを。俺はどうすれば稼げるようになるんだ」

プロメテウスはニヤリと笑い、iPadをポンと叩いた。

「素直でよろしい。では、特別講義を始めようかの。題して『カルトブランディング』。顧客を熱狂させ、お前を教祖へと祭り上げる禁断の技法じゃ」

ここから、俺の人生を一変させる奇妙な授業が始まった。

第1部：なぜ、お前の「正しい情報」は誰にも響かないのか？（カルトブランディングの定義）

第一部サムネ.png

第1話：正論バカの悲劇

☆「良いものを作れば売れる」という大いなる勘違い

「さて、まずはマズオよ。お前の致命的な勘違いから正してやらねばならんのう」

プロメテウスは空間に椅子のようなものを出現させ、どっかりと腰を下ろした。俺も恐る恐る、向かいに出現したパイプ椅子に座る。

「お前はさっき、『コンテンツの質は最高だ』と言ったな？具体的にどういう意味で『質が良い』と思っておるんじゃ？」

「それは……情報の正確性とか、論理の整合性とかだよ。俺は適当なコピペ記事なんか書かない。一次情報に当たって、歴史的な背景も踏まえて、誰にも反論できないような完璧な論考を書いてるつもりだ」

俺は胸を張って答えた。これだけは譲れない。

「ふむ。『誰にも反論できない』か。それが諸悪の根源じゃよ」

「はあ？間違ったことを書けっていうのか？」

「そうではない。よいか、『正しさ』というのは、あくまで『最低条件』に過ぎんのじゃ。今の時代、正しい情報なんぞググれば0.1秒で出てくる。AIに聞けば論文並みの回答が返ってくる時代じゃぞ？お前のその『正確な情報』に、人はわざわざ金を払うと思うか？」

ウッと言葉に詰まる。確かに、チャットGPTの登場以降、俺のような「まとめ・解説系」の書き手は苦境に立たされている。

「お前がやっておるのは、百科事典の売り歩きと同じじゃよ。機能的で、正しくて、役に立つかもしれん。だが、面白くもなんともない。感情が動かんのじゃ」

プロメテウスはiPadの画面をスワイプし、一枚の図を表示させた。

「マズオ、お前は『カルト』という言葉にどんなイメージを持っておる？」

「カルト？そりゃあ……怪しい宗教とか、洗脳とか、危険な集団ってイメージだよ。オウム真理教とか、そういう」

「うむ、一般的にはそうじゃろうな。だが、マーケティングの世界において『カルト』とは、もっと広義で、かつ強力な意味を持つんじゃ」

老人は声を張り上げた。

「カルトブランディングとは、顧客をただの『購入者』から、ブランドに身を捧げる熱狂的な『信者』へと変える技法のことじゃ」

☆機能やスペックで勝負するな、意味で勝負せよ

「信者……」

「そうじゃ。例えばアップル信者、ハーレーダビッドソンの乗り手、あるいは特定のアイドルグループのファンたち。彼らは、単に『機能が良いから』という理由だけでその商品を買っていると思うか？」

「いや……まあ、機能もいいだろうけど、それだけじゃない気がするな。アップルなんて、スペックだけ見たらWindowsの方がコスパいい場合もあるし」

「その通りじゃ！ここが重要じゃぞマズオ。彼らはな、パソコンやバイクという『モノ』を買っているのではない。そのブランドが提示する『世界観』や『思想』、そしてそのコミュニティに属しているという『アイデンティティ』を買っているんじゃ」

プロメテウスは熱弁を振るう。

「お前のコンテンツは『機能（スペック）』しか語っておらん。『ヘーゲルがこう言った』『SaaSの指標はこうだ』……そんなものは教科書じゃ。読んだ瞬間に『へー』で終わる。そこには『意味』がないんじゃよ」

「意味……？」

「そうじゃ。『なぜ、私がこれを読まなければならないのか？』『これを読むことで、私はどんな人間になれるのか？』 という、人生における意味じゃ。人はな、正論では動かん。自分の人生を肯定してくれる『物語』に金を払うんじゃよ」

俺はハッとした。
俺のメルマガには、確かに情報は詰まっている。だが、そこには「俺」がいなかった。読者に「どうなってほしいか」というメッセージもなかった。ただただ、知識をひけらかしていただけだったのだ。

☆カルト宗教とカルトブランドの共通点とは？

「いいかマズオ。これからわしが教えるのは、ある種、カルト宗教の手法をビジネスに応用したものじゃ。だが勘違いするなよ、詐欺や洗脳をしろと言うておるのではない」

プロメテウスは真剣な眼差しで俺を見据えた。

「カルト宗教がなぜあれほど人を惹きつけるか、考えたことはあるか？」

「……心の隙間に入り込むから、とか？」

「半分正解じゃ。現代人はな、猛烈に『孤独』なんじゃよ。繋がりを求めておる。自分が何者であるか、誰かに定義してほしいと願っておる。カルト宗教はそこに『居場所』と『役割』と『崇高な目的』を与えるんじゃ」

「居場所と、役割と、目的……」

「うむ。これを健全なビジネスに応用したのが『カルトブランディング』じゃ。
1. 顧客のエンゲージメント（絆）を高める
2. ブランドの文化（カルチャー）を大切にする
この2点を徹底的に突き詰めると、ブランドは宗教性を帯びてくる。顧客はもはや客ではなく、お前の教えを広める『伝道師』となり、お前のブランドを守る『親衛隊』となるんじゃ」

プロメテウスはニヤリと笑った。

「どうじゃマズオ。お前のたった3人の読者は、お前の記事を友人に勧めてくれているか？お前が批判されたら、怒って反論してくれるか？」

「……いや、全く。たぶん、俺が死んでも気づかないと思う」

「それではダメじゃ。目指すのはそこではない。お前が『右』と言えば、信者たちがこぞって『右こそ正義！』と叫び出す。そんな熱狂的なコミュニティを作ることこそが、弱者が強者に勝つ唯一の方法なんじゃよ」

俺の背筋に、ゾクッとしたものが走った。
それは恐怖でもあり、同時に武者震いのような興奮でもあった。

「ただの客を、信者に変える……。そんなことが、俺にもできるのか？」

「できるとも。むしろ、お前のような『社会に適合できない変人』こそ、教祖の素質があるんじゃよ。さあ、次へ進むぞ。まずはお前のその『誰にでも好かれようとする』貧乏くさい根性から叩き直してやるわい」

第2話：マス（Mass）を捨てろ、ニッチを掘れ

☆「全員に好かれたい」が命取り

「誰にでも好かれようとする根性……？どういう意味だよ」

俺は眉をひそめた。ビジネスなんだから、客は多ければ多いほどいいに決まってる。市場規模はデカイ方が正義だろ。

「それが貧乏人の発想だと言うておるんじゃ。マズオよ、お前のメルマガのコンセプトをもう一度言ってみろ」

「えっと……『全てのビジネスパーソンのための、教養としての経営思想』だけど」

「ほれ見ろ。『全ての』じゃと？呆れて物も言えんわ」

プロメテウスは大袈裟に肩をすくめてみせた。

「いいか、マス（大衆）に向けたメッセージなど、今の時代は誰も聞いてはおらん。情報過多の現代において、人々は『自分に関係があること』しか目に入らんのじゃよ。『全てのビジネスパーソン』などというのっぺらぼうは、この世に存在せん」

「でも、ターゲットを絞りすぎたら、パイが小さくなるじゃないか」

「パイなど小さくていい！いやむしろ、小さくあるべきなんじゃ！」

老人はiPadの画面を激しくタップし、グラフのようなものを空中に投影した。そこには、正規分布のような山形の曲線が描かれている。

「これを見よ。中央の山が高い部分、これが『平均的な人々』、つまりマス層じゃ。大手企業はここのシェアを奪い合っておる。コカ・コーラやトヨタの戦場じゃな。お前のような個人が、資本力のある巨人とここで戦って勝てると思うか？」

コレGemini_Generated_Image_ckqryjckqryjckqr.png

「……無理だね。広告費で圧殺される」

「その通りじゃ。だからこそ、お前が狙うべきは山の裾野、つまり『ニッチ』なんじゃよ。だがな、単にニッチな商品を売ればいいわけではない。ここを履き違えるなよ」

プロメテウスは鋭い視線を俺に向けた。

「お前がやるべきことは、『誰からも嫌われない無難なコンテンツ』を作ることではない。『一部の人間には強烈に愛されるが、それ以外からは見向きもされない、あるいは嫌われるコンテンツ』を作ることなんじゃ」

☆平均的な商品は、誰の記憶にも残らない

「嫌われる……？わざわざアンチを作るってことか？」

「そうじゃ。カルトブランドの最大の特徴はな、『排他性』にある。
『俺たちは、あいつらとは違う』
『この価値がわかるのは、選ばれた俺たちだけだ』
そう思わせることで、顧客の帰属意識は爆発的に高まるんじゃよ」

老人はニヤリと笑う。

「例えば、アップルの初期のCMを知っておるか？ 1984年の有名なやつじゃ。あれは当時の巨人であるIBMを『支配者』に見立て、それを打ち破る『反逆者』としてマッキントッシュを描いた。あれを見た大衆の多くは『なんだこれ』と困惑したが、一部のクリエイターや革新者たちは『これこそ俺たちのための道具だ！』と熱狂したんじゃ」

「なるほど……。IBMという巨大な敵を作って、差別化したわけか」

「そう。お前のメルマガはどうじゃ？誰かを批判したり、特定の価値観を否定したりしておるか？」

「いや、炎上したくないし……。できるだけ中立公正に、アカデミックな立場から解説するようにしてる」

「だからつまらんのじゃ！中立？公正？そんなものはウィキペディアに任せておけ！人間味のない『平均点』のコンテンツなど、誰の記憶にも残らん。愛の反対は憎しみではない、無関心じゃ。お前は今、世間から完璧に無視されておるんじゃよ」

ぐうの音も出ない。無視されている。これほど残酷な事実はない。

「マズオよ、勇気を持て。『全員』を捨てるんじゃ。お前のその偏屈な知識、独特な視点、それを面白いと言ってくれる『変人』だけを相手にしろ。100人に好かれようとするな。99人に無視され、たった1人が『こいつは俺の代弁者だ！』と泣いて喜ぶ。そんなコンテンツを目指すんじゃ」

☆ターゲットを絞るのではない、「信者」を見つけるのだ

「でもさ、そのたった1人を見つけるのが大変なんだよ」

俺は弱々しく反論した。

「そこがお前の勘違いじゃ。マーケティング用語でよく『ターゲティング』と言うじゃろう？年齢、性別、居住地で絞り込むやつじゃ。あれはもう古い」

「古い？」

「うむ。今の時代、属性（デモグラフィック）で人は縛れん。20代女性だからタピオカが好きとは限らんし、50代男性だからゴルフが好きとも限らんじゃろ？重要なのは『価値観』や『イデオロギー』の共有じゃ」

プロメテウスはトーガの裾を正しながら続けた。

「ターゲットを『絞る』のではない。お前の旗印を高く掲げ、それに共鳴して集まってくる人間を『見つける』のじゃ。
『私は世界をこう見ている』
『私はこれが許せない』
『私はこうあるべきだと信じている』
そうやってお前の『偏愛』と『偏見』をさらけ出せ。そうすれば、同じ周波数を持つ信者たちが、磁石に吸い寄せられるように集まってくる」

「偏愛と偏見……。そんなものを出していいのか？」

「いいに決まっておる。むしろ、それこそが今のコンテンツビジネスにおける『最強の差別化要因』じゃよ。お前の9000万の借金も、東大卒のプライドも、全てが唯一無二のスパイスになる。無味乾燥な『教養講座』なんぞ今すぐやめて、お前の魂の叫びをコンテンツにせい！」

魂の叫び。
俺の中に眠っていた、ドロドロとした感情の塊。それをビジネスにするなんて考えたこともなかった。だが、老人の言葉には不思議な説得力があった。

第3話：カルトブランディングの3要件

☆お前のブランドに「自分らしさ」を感じるか？

「さて、概念的な話はこれくらいにして、少し具体的な要件定義の話をしようかの」

プロメテウスはiPadを操作し、3つのキーワードを空中に浮かび上がらせた。

1. あなたらしさ（Different）
2. 伝道師（Evangelist）
3. コミュニティ（Community）

「これがカルトブランドを成立させるための3つの柱じゃ。まずは『あなたらしさ』。これはさっき話した『偏愛』や『イデオロギー』のことじゃな。他とは違う、明確な『違い』があるかどうか」

「違い、か……。俺の場合、東大卒なのに底辺、ってのは違いになるかな？」

「なるかもしれんし、ならんかもしれん。重要なのは、それが単なる属性ではなく、お前の『生き様』や『哲学』として昇華されているかどうかじゃ。単に『落ちぶれた高学歴』ならそこらにいくらでもおる。だが、『落ちぶれたからこそ見えた、資本主義の真理』を語れるなら、それは強力な武器になる」

「資本主義の真理……」

「そうじゃ。お前だからこそ語れる言葉、お前だからこそ見える景色。それをパッケージングするんじゃ。それが『ブランド』になる」

☆顧客ではなく「伝道師」を作れ

「次に『伝道師』じゃ。これがカルトブランディングの肝と言ってもいい」

老人は目を輝かせた。

「普通のマーケティングでは、商品を売って終わり、あるいはリピートさせて終わりじゃ。だがカルトブランディングでは、顧客に『布教活動』をさせるところまでをゴールとする」

「布教活動って……マルチ商法みたいだな」

「仕組みは似ているかもしれんが、動機が違う。マルチは金のために勧誘するが、カルトブランドの信者は『愛』のために勧誘する。
『この商品は最高なんだ！』
『この人（教祖）の考えを知らないなんて人生損してる！』
そうやって、頼みもしないのに勝手に口コミを広げ、SNSで拡散し、新規客を連れてくる。そういう熱狂的なファンを育てられるかどうかが勝負じゃ」

「勝手に宣伝してくれるファンか……。夢のような話だな」

「夢ではない。現実に、ハーレーダビッドソンのファンは、ロゴのタトゥーを体に彫るほどじゃぞ？企業ロゴを体に刻むなんて、正気の沙汰とは思えんじゃろ？だが、彼らにとってはそれが『誇り』なんじゃ。そこまで愛されるブランドになれとは言わんが、少なくとも『友人に教えたくなる』レベルの熱量は必要じゃな」

☆破壊的カルトと健全なカルトの違い

「最後に、これだけは釘を刺しておかねばならん。『破壊的カルト』と『健全なカルト』の違いについてじゃ」

プロメテウスの表情が厳しくなった。

「お前がやろうとしているのは、あくまでビジネスじゃ。人々の生活を豊かにし、幸福にするためのものでなければならん。
世の中には『破壊的カルト』と呼ばれる集団も存在する。彼らは、信者から金銭を搾取し、家族や社会から隔離し、精神的に支配しようとする。これは断じて許されることではない」

「ああ、もちろんだよ。俺は詐欺師になりたいわけじゃない」

「うむ。健全なカルトブランドとはな、信者に『自由』を与えるものじゃ。
『自分らしく生きる勇気』
『同じ価値観を持つ仲間との繋がり』
『人生を楽しむためのツール』
これらを提供し、結果として対価を得る。顧客のエンゲージメントは高いが、いつでも離脱できる自由があり、社会とも共存している。これを目指すんじゃ」

「なるほど。支配するんじゃなくて、エンパワーメント（力づけ）するってことか」

「その通り！さすが東大院卒、飲み込みが早いのう」

老人は満足そうに頷いた。

「搾取ではなく、貢献。支配ではなく、解放。この倫理観（エシックス）を忘れると、お前はただの『教祖気取りのペテン師』に落ちぶれるぞ。心に刻んでおけ」

俺は深く頷いた。
ただ稼げればいいと思っていた。だが、この老人の話を聞いていると、もっと根本的な、人間としての在り方を問われているような気がしてくる。

「さて、カルトブランディングの正体については理解できたかの？」

「ああ、なんとなくわかってきたよ。要は、媚びずに自分の哲学を貫いて、それに共感する熱狂的なファンと一緒にコミュニティを作れってことだろ？」

「うむ、大筋はそれでよい。では次じゃ。そもそもなぜ、現代においてこれほどまでに『カルト的』なアプローチが必要とされているのか？その時代背景を紐解いていこうかのう。ここを理解せんと、お前の戦略はまた的外れになるぞ」

プロメテウスは楽しそうに笑い、iPadを宙に放り投げた。
iPadは光の粒子となって消え、俺たちの周りの景色がガラリと変わる。
そこは、無機質な高層ビルが立ち並ぶ、現代の東京の街角だった。

第2部：現代人が渇望する「つながり」と「居場所」（時代背景と必然性）

第二部サムネ.png

第4話：孤独な現代人と、お前の無味乾燥なコンテンツ

☆なぜ人はコミュニティを求めるのか

気がつくと、俺たちは渋谷のスクランブル交差点のど真ん中に立っていた。
無数の人々が行き交い、巨大ビジョンからはアイドルの新曲PVが大音量で流れている。だが不思議なことに、誰一人として俺たちの存在に気づいていないようだ。

「うわっ、すごい人だ……。酔いが回りそう」

「ほれ、よく見てみろマズオ。彼らの顔を」

プロメテウスに促され、俺は道ゆく人々を観察した。
スマホの画面を凝視しながら歩くサラリーマン。イヤホンで外界を遮断している女子高生。どこか虚ろな目で信号待ちをするフリーター風の青年。

「みんな、どこか寂しそうじゃろう？」

「寂しそう……かな？まあ、楽しそうではないけど」

「現代は『接続過剰な孤独社会』と言われておる。SNSで24時間誰かと繋がっているようでいて、心は誰とも繋がっていない。いいねの数で承認欲求を満たそうとするが、それは塩水を飲むようなもので、渇きは癒えん」

老人は雑踏の中で両手を広げた。

「昔はな、地縁や血縁、あるいは終身雇用の会社という強力なコミュニティがあった。人は生まれた時から『○○村の誰兵衛』であり『○○社の社員』という所属を持っていた。だが今はどうだ？地域コミュニティは崩壊し、会社もいつクビになるかわからん。個人は砂粒のようにバラバラになり、アイデンティティの危機に瀕しておる」

「アイデンティティの危機、か……」

俺自身のことを言われているようで胸が痛い。
東大という看板を失い、会社組織にも属さず、ただの「ウーバー配達員」として街を彷徨う俺。何者でもない自分への不安は、痛いほどわかる。

「だからこそ、現代人は強烈に『所属』を求めているんじゃ。
『私はここの住人だ』
『私はこの仲間たちと同じ価値観を持っている』
そう心から思えるコミュニティ、すなわち『サードプレイス（第3の場所）』をな」

☆Z世代が求めているのは「モノ」ではなく「イデオロギー」だ

「特に若い世代、いわゆるZ世代やミレニアル世代においてこの傾向は顕著じゃ」

プロメテウスが指差した先には、古着をおしゃれに着こなし、環境保護団体のトートバッグを持った若者たちがいた。

「彼らはモノが溢れる時代に生まれた。機能的に優れた商品など当たり前で、そこに価値を感じにくい。彼らが消費を通じて表現したいのは『自分は何を支持するか』というイデオロギーなんじゃよ」

「イデオロギー消費ってやつか」

「うむ。例えば、パタゴニアというアウトドアブランドがあるじゃろ？彼らは『このジャケットを買わないでくれ』という広告を出したことがある。環境負荷を減らすために、無駄な消費はするなというメッセージじゃ」

「企業が『買わないで』って言うのか？矛盾してるじゃん」

「普通ならな。だが、その強烈な思想に共感した人々は、逆にパタゴニアの熱狂的なファンになった。『環境を守りたい』というイデオロギーを共有する仲間として、そのブランドを選んだんじゃ。結果として、パタゴニアは圧倒的な支持を得た」

老人は俺の顔を覗き込んだ。

「翻ってお前のコンテンツはどうじゃ？『教養としての経営思想』……。そこに、読者が参加したくなるような『思想』はあるか？読者がそれを読むことで『私は○○を支持する人間だ』と誇れるような旗印はあるか？」

「……ないな。ただの勉強材料だ」

「それがお前の敗因じゃ。お前のコンテンツは無味乾燥なんじゃよ。味がない。読者を孤独から救うどころか、お前自身が孤独な塔に引きこもって情報を垂れ流しているだけ。それでは誰も寄り付かん」

☆広告はもはや「ノイズ」でしかない

スクランブル交差点の巨大ビジョンが切り替わり、今度は脱毛サロンの派手な広告が映し出された。
『今なら500円！』『美肌を手に入れよう！』

「うるさいのう」

プロメテウスが顔をしかめる。

「現代人は、1日に数千もの広告メッセージに晒されておる。テレビ、ネット、街頭ビジョン……。もはや脳が処理しきれず、広告を無意識に『ノイズ』としてシャットアウトするようになってしまった」

「確かに。俺もYouTubeの広告は秒でスキップするわ」

「そうじゃろう？企業が一方的に『買え！いいモノだぞ！』と叫ぶマスマーケティングは、もはや死に体なんじゃ。
今の時代、人を動かすのは『信頼できる誰かからの推奨』だけよ。
『あいつが面白いって言ってたから』
『あのサロンのメンバーが勧めてたから』
この『信頼のネットワーク』に入り込まなければ、商品は売れん」

老人は俺の肩をポンと叩いた。

「カルトブランディングは、この信頼のネットワークを人工的に作り出す技術でもある。
広告費を払ってノイズを撒き散らすのではなく、熱狂的な信者を作り、彼らに『口コミ』という最強のメディアになってもらう。
これこそが、資本力のない弱者が、この騒がしい世界で声を届ける唯一の方法なんじゃよ」

第5話：情報の透明化と「嘘」の代償

☆バレる嘘、盛った経歴、そして失われる信頼

場面が変わる。
今度は静かなカフェのような場所だ。俺たちはテーブル席に向かい合って座っていた。

「さてマズオ。お前、プロフィールの経歴を少し『盛って』おらんか？」

プロメテウスがいきなり痛いところを突いてきた。
俺はコーヒーを吹き出しそうになる。

「えっ、い、いや……盛るっていうか、その……多少、見栄え良く書いてる部分はなくもない、かな……」

俺のプロフィールには『元・某大手シンクタンク勤務』と書いてあるが、実際はインターンで3ヶ月いただけだ。嘘ではないが、限りなくグレーに近い。

「カッカッカ！動揺しすぎじゃ。まあよい、誰しも自分を良く見せたいものじゃからの。だがな、今の時代、その『小さな嘘』が命取りになるぞ」

老人はiPadで検索画面を見せてきた。そこには、経歴詐称で炎上したインフルエンサーのまとめ記事が並んでいる。

「インターネットは世界を透明にした。あらゆる情報は検索可能になり、嘘や誇張は瞬時に暴かれる。
『元マッキンゼー』と名乗れば、同僚だった人間が『そんな奴知らんぞ』とツイートする。
『年商10億』と豪語すれば、誰かが登記簿を調べて『赤字じゃねーか』と暴露する。
もはや、隠し事はできんのじゃ」

「怖い世の中だよな……」

「いや、むしろ健全になったと言えるじゃろう。かつては情報格差を利用して、情弱を騙すような商売が横行しておった。だが今は、誠実さこそが最大の資産になる時代なんじゃ」

☆マズオの「権威性」が逆効果な理由

「お前は『東大院卒』という権威性を前面に押し出して商売をしてきたな？」

「ああ。だって、それが唯一の強みだからな」

「それが間違いじゃ。今の読者は賢い。『権威』を盲目的に信じるような時代は終わったんじゃよ。むしろ、権威を振りかざす奴ほど『胡散臭い』『上から目線だ』と敬遠される傾向すらある」

プロメテウスはコーヒーを一口すすった。

「お前が『私は偉い先生です』というスタンスで発信する限り、読者との間には冷たい壁ができる。
『先生と生徒』の関係では、熱狂的なコミュニティは生まれん。
必要なのは『リーダーと同志』の関係じゃ。
『俺も悩んでいる。俺も失敗した。だが、一緒に答えを探そうじゃないか』
そうやって同じ目線に降りてくる人間にこそ、現代人は親近感を抱き、応援したくなるんじゃ」

「同じ目線……。でも、それじゃあプロとしての威厳がなくならないか？」

「威厳など犬に食わせろ！お前が欲しいのは『尊敬』か？それとも『共感』と『金』か？」

「……金です」

「ならばプライドを捨てろ。お前の弱さ、失敗、葛藤。それらを隠さずにさらけ出せ。
『情報の透明化』が進む現代において、最大のコンテンツは『リアルなドキュメンタリー』なんじゃよ。
完成された成功者の自慢話より、泥臭くあがく敗者の逆転劇の方が、よほどエンタメとして価値があると思わんか？」

☆「人間味（ヒューマンタッチ）」がない情報は死んでいる

「AIの話を思い出せ。チャットGPTに『ドキュメンタリー』は書けん。なぜならAIには身体がなく、痛みを感じないからじゃ。
だがお前には痛みがある。借金9000万の絶望がある。それはAIには絶対に模倣できない、お前だけの『オリジナルコンテンツ』なんじゃよ」

プロメテウスは熱く語りかける。

「お前の記事がつまらないのは、そこに『人間味（ヒューマンタッチ）』がないからじゃ。
無機質な情報の羅列は、AIに駆逐される。
だが、書き手の体温が伝わる文章、血の通ったストーリーは、どんなに技術が進歩しても価値を失わん。
カルトブランディングとは、突き詰めれば『人間臭さの肯定』なんじゃ。
完璧である必要はない。むしろ、欠落しているからこそ、味や手触り感が出て差別化されるのじゃ」

老人の言葉が、俺の心の奥底に染み渡る。
俺は自分の弱さを隠すために、必死で知識の鎧をまとっていた。
だが、その鎧こそが、読者との距離を遠ざけ、俺を孤独にしていた元凶だったのだ。

「……わかったよ。俺のダメなところも、全部さらけ出す覚悟を決める」

「うむ、良い目つきになってきたのう。
では、いよいよ実践編じゃ。カルトブランドを構築するための具体的な『7つのキーワード』を伝授しよう。これをマスターすれば、お前のコンテンツは劇的に生まれ変わるはずじゃ」

第3部：信者を生み出すための「7つの聖なるキーワード」（実践キーワード編）

第三部サムネ.png

第6話：【イデオロギー】お前の「正義」はなんだ？

☆ただのノウハウ屋になるな、思想家になれ

カフェの風景が歪み、俺たちはいつの間にか古びた講堂のような場所に立っていた。演台の前に立つプロメテウスが、黒板にチョークで大きな文字を書く。

『イデオロギー（Ideology）』

「さてマズオよ、ここからがカルトブランディングの真髄、7つのキーワードの解説じゃ。まずはイデオロギー。これがなければ何も始まらん」

「イデオロギー……。なんか政治っぽい言葉だな」

「うむ。日本語で言えば『信念体系』や『世界観』と言い換えてもいい。
単なる『便利さ』や『安さ』ではなく、『我々は世界をこうあるべきだと信じている』という強い思想のことじゃ」

プロメテウスは黒板を叩いた。

「例えば、アップルのイデオロギーは『Think Different（発想を変えろ）』じゃ。彼らは単にパソコンを売っているのではない。『現状に満足せず、世界を変えようとする反逆者たち』を肯定し、応援するという思想を売っている」

「なるほど。だからクリエイターや起業家に人気があるのか」

「そうじゃ。他にも、スターバックスは単なるコーヒー屋ではない。『家庭でも職場でもない、第3の居場所（サードプレイス）』という概念を提供しておる。
ハーレーダビッドソンはバイク屋ではない。『個人の自由と反骨精神』の象徴じゃ。
強いブランドには必ず、背骨となるイデオロギーが存在する」

☆「教養としての経営思想」がつまらない決定的理由

「そこでお前のメルマガじゃ。『教養としての経営思想』。ここにあるイデオロギーはなんじゃ？」

「えっと……『過去の偉人の知恵を学んで、賢くなろう』的な？」

「弱い！弱すぎるわ！そんなものは『夏休みの宿題を早く終わらせよう』レベルのスローガンじゃ！」

プロメテウスは一喝した。

「『賢くなってどうするのか？』『今の世の中の何が間違っていて、どう正すべきなのか？』という怒りや情熱が全く感じられん。
いいか、イデオロギーとはな、ある種の『偏り』なんじゃ。
『AではなくBだ！』と言い切る強さが必要なんじゃよ」

俺は考え込んだ。俺の信念とはなんだろうか？

「例えばじゃな……お前は今の『薄っぺらい自己啓発』や『稼げればいいという風潮』に腹が立っておるんじゃろ？」

「ああ、そうだね。中身のない情報商材屋とか、見てると虫唾が走るよ」

「ならばそれをイデオロギーにするんじゃ。
『真の知性なき成功は、虚飾に過ぎない』
『我々は、時代を超えて残る本質的な知恵だけを武器にする』
『流行りのテクニックに踊らされる情弱を脱し、思考する葦（あし）となれ』
……どうじゃ？こう言われると、ただの勉強会が『知の武装集団』に見えてこんか？」

「おお……！確かに、なんかカッコいいな。参加したくなる」

「そうじゃろう？機能は同じでも、そこに『意味』が付与されることで、コンテンツは輝き出す。お前はただのノウハウ屋になってはいかん。読者を導く『思想家』になるんじゃ」

第7話：【異端児】常識を疑い、タブーを犯せ

☆優等生である必要はない