はじめに

　もしかしたら、あなたは最近のニュースで「円安」という言葉をよく聞くようになって、なんとなく不安を感じているのではないでしょうか。

スーパーで買い物をしていても、以前より輸入品の値段が高くなったように感じたり、海外旅行の費用を調べて驚いたりしたことがあるかもしれません。

　でも、この円安という状況は、見方を変えればあなたにとって大きなチャンスでもあるのです。それが本書で提案する「ドル活」です。ドル活とは、円をドルに替えることで、円安の波を上手に乗って資産を守ったり、増やしたりする活動のことです。

　多くの人は、投資や外貨というと難しそうで手を出せないと思いがちです。確かに、専門用語や、複雑な仕組みを説明されたりすると、初心者の方は尻込みしてしまうでしょう。でも、安心してください。

ドル活は、決して一部の特別な投資家だけのものではありません。普通のサラリーマンの方も、主婦の方も、学生の方も、誰でも始めることができます。大切なのは、正しい知識を身につけ、自分に合った方法を見つけることです。

　ドル活は、思っているよりもずっと身近で簡単なものなのです。例えば、ドルへの両替も始めることも立派なドル活ですし、海外旅行で賢くお金を使うことも、実は効果的なドル活の一つです。大切なのは、難しく考えすぎずに、まずは小さな一歩から始めることなのです。

　この本では、投資の経験がない方や、外貨に触れたことがない方でも、安心してドル活を始められるよう、できるだけわかりやすい言葉でお話ししていきます。専門用語が出てきたときは、必ず丁寧に説明しますし、実際の手順も具体的にお伝えします。

　円安が進む今だからこそ、ドル活を始める絶好のタイミングです。早く始めれば始めるほど、その恩恵をたくさん受けとれます。一年後、三年後、五年後のあなたが、「あのときドル活を始めて良かった」と心から思える日が来るはずです。

　想像してみてください。円安が続く中でも、あなたの資産がしっかりと守られ、場合によっては増えている状況を。海外旅行に行くときも、ドルを持っていればあまり為替を気にすることなく楽しめる余裕を。そして、将来への不安が少しずつ解消されていく安心感を。

　また本書では、リスクについてもしっかりとお伝えし、失敗を避けるための心得もお話しします。あなたがこの本を読み終える頃には、円安というニュースを聞いても不安に感じることはなくなるでしょう。

むしろ、「これはチャンスだ」と前向きに捉えられるようになっているはずです。そして、実際にドル活を始めて、その効果を実感していただけることを確信しています。

　さあ、一緒にドル活の世界に足を踏み入れてみましょう。この本が、あなたの豊かな未来への第一歩となることを心から願っています。

　なお、最後まで読んでいただいた読者の皆さんには、最後にすばらしい【特典】を用意していますのでお楽しみに。

第1章：円安って何？なにが問題なの？

　この章では、そもそも円安とは何なのか、なぜ今問題になっているのかを、できるだけわかりやすくお話しします。為替の仕組みから、私たちの生活への影響まで、ドル活を始める前に知っておきたい基礎知識をしっかりと身につけましょう。

1.1 為替相場の基本

　為替相場と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれませんが、実はとてもシンプルな仕組みです。為替相場とは、簡単に言えば「通貨の交換レート」のことで、1ドルが何円で交換できるかを示しています。

　例えば、1ドル＝100円という状況があったとします。これは、アメリカの1ドル紙幣と、日本の100円硬貨が同じ価値を持っているということです。もしあなたが100円を持っていれば、それを1ドルに交換することができるのです。

　この為替レートは、世界中の人々がお金を交換する需要と供給によって、まるで野菜の値段のように日々変動しています。ドルが欲しい人が多ければドルの値段（円での価格）は上がりますし、円が欲しい人が多ければ円の値段（ドルでの価格）が上がります。

　テレビのニュースでよく聞く「今日の為替は1ドル150円で取引されています」という表現は、今この瞬間、1ドルを手に入れるために150円が必要だということを意味しています。つまり、以前よりも多くの円を払わなければドルを買えなくなったということです。

この時、数字が高くなると円高と思う人もいると思いますが、もともと100円で買えた１ドルが、今は150円出さないと買えなくなったということは、相対的に円がドルに対して価値が下がって安くなったと考え、これを円安と呼ぶのです。

　為替相場は平日24時間、世界中のどこかの金融市場で取引されています。東京市場が閉まっても、ロンドン市場やニューヨーク市場で取引が続いているため、私たちが寝ている間にも為替レートは動き続けています。

　また、為替相場に影響を与える要因はたくさんあります。各国の経済状況、政治情勢、金利政策、自然災害、さらには投資家の心理まで、様々な要素が複雑に絡み合って為替レートが決まっているのです。

1.2 日本は本当に円安に向かっているのか？

　円の価値は、日本という国の経済力を映し出す鏡のようなものです。日本の経済が強く、将来性があると世界から評価されれば円の価値は上がりますし、逆に心配されれば円の価値は下がってしまいます。

　戦後の日本は、製造業を中心とした輸出大国として急成長を遂げました。トヨタやソニーなど、世界に誇る企業が生まれ、「メイド・イン・ジャパン」は高品質の象徴として世界中から信頼されていました。その結果、もともと３６０円/ドルだった円の価値も着実に上昇（つまり円高）していったのです。

日本銀行（日銀）は、長年にわたって超低金利政策を続けてきました。これは、バブル崩壊後の失われた３０年におけるデフレ脱却と経済成長を促すための政策ですが、同時に円の価値を押し下げる効果がありました。投資家は、より高い金利を求めて他国の通貨に資金を移すため、円が売られやすくなるのです。

しかし、失われた30年を経て、やっとインフレ基調が定着し、日銀は金利を上げ始めました。これは諸外国との金利差を縮める効果がりますので、円高を誘導する方向です。

　また、日本の国際競争力は低下したといっても、日本には依然として多くの強みがあります。技術力の高さ、安定した政治制度、豊富な外貨準備高など、これらは円への信頼を支える重要な要素です。また、世界的な経済不安が起こると、安全資産として円が買われる「有事の円買い」という現象も見られます。

　では本当に日本は円安の未来に向かっているのでしょうか？

　これにはいろいろな意見もあり、未来を正確に予想するのは難しいですが、単純に考えれば、近年の日本経済は様々な課題を抱えています。少子高齢化による人口減少、格差の拡大、数々の規制、官民一体となった既得権益へのこだわりとリスクを取らない体質。

また、忘れてならないのが今後３０年の間に確実に起こると考えられている、首都直下型地震と南海トラフの巨大地震のリスク。

これらのすべてが、国際競争力の低下を招いており、これらの問題が円の価値にも影響を与えています。

　つまり、一時的に円高となることはあっても、円の価値はゆっくりとゆっくりと低下していくと思われます。

1.3 円安が生活に与える影響

　円安と聞いても、まだまだ普段の生活にどんな影響があるのかピンとこない方も多いでしょう。でも、円安は私たちの日常生活の様々な場面で、知らず知らずのうちに影響を与えるのです。

　まず最も身近な影響は、輸入品の価格上昇です。日本は食料品やエネルギー、原材料の多くを海外からの輸入に頼っています。円安になると、同じ商品を輸入するのにより多くの円が必要になるため、結果的に商品の価格が上がってしまいます。

　例えば、小麦やとうもろこしなどの穀物価格の上昇は、パンや麺類、お菓子などの値上がりにつながります。また、原油価格の上昇は、ガソリン代だけでなく、プラスチック製品や輸送費にも影響し、最終的には様々な商品の価格に転嫁されます。

　海外旅行への影響も見逃せません。円安が進むと、現地での買い物や食事、宿泊費などがより高く感じられるようになります。以前は気軽に行けた海外旅行が、家計にとって大きな負担になってしまうケースも少なくありません。

　一方で、円安にはプラスの面もあります。日本を訪れる外国人観光客にとって、日本での買い物や観光がお得になるため、インバウンド観光が活発になります。また、海外に製品を輸出している日本企業にとっては、売上を円に換算した際の金額が増えるため、業績向上につながることもあります。

　しかし、多くの一般家庭にとって、円安の影響はマイナス面の方が大きく感じられるでしょう。給料は変わらないのに、生活費が少しずつ上がっていく状況は、家計の圧迫要因となります。だからこそ、円安に対する備えとしてのドル活が重要になってくるのです。

　円安の影響を受けにくい家計を作るためには、収入源の多様化や、資産の一部を外貨で保有することが有効な対策となります。これがまさに、この本でお伝えするドル活の目的なのです。

第2章：「ドル活」ってどういう意味？

　この章では、本書の中心テーマである「ドル活」について詳しく解説します。ドル活とは何なのか、どのような方法があるのか、そしてなぜ今注目されているのかを、具体例を交えながらわかりやすくお伝えします。

2.1 ドル活は円をドルに替えて"得する"行動

　「ドル活」とは、実際にはどのような活動を指すのでしょうか。簡単に言えば、「円をドルに替えることで、円安の恩恵を受けたり、資産を守ったりする活動」のことです。

　なぜドルなのかというと、ドルは世界で最も広く使われている基軸通貨だからです。国際的な貿易や投資の多くがドルで行われており、世界中の中央銀行もドルを外貨準備として保有しています。つまり、ドルは世界で最も信頼されている通貨の一つなのです。

　ドル活の基本的な考え方は、資産の一部をドルやその同等の価値を有する金融商品の形で保有することで、円だけに依存するリスクを減らすことです。もし円安が進んでも、ドル建ての資産は円換算で価値が上がるため、全体の資産価値を守ることができます。一般には「ドル投資」や「通貨分散」とも呼びます。

　例えば、あなたが100万円の資産を持っているとしましょう。すべてを円で保有していた場合、円安が進むと実質的な購買力は下がってしまいます。しかし、50万円分をドルに替えておけば、円安の影響を半分に抑えることができるのです。

　また、ドル活は単なるリスクヘッジだけでなく、積極的に利益を得る機会も提供してくれます。アメリカの金利が日本より高い場合、ドル建ての預金や投資商品から、円建てよりも多くの利息を得ることができます。

　ドル活は決して難しいものではありません。銀行で外貨預金を始めることから、海外旅行でドルを上手に活用することまで、様々なレベルでドル活を楽しむことができます。大切なのは、自分の資産規模や投資経験に合った方法を選ぶことです。

2.2 外貨預金によるドル活

　外貨預金は、最も身近で始めやすいドル活の方法です。普通の円預金と同じように、銀行にお金を預けるだけですが、預ける通貨がドルになります。多くの人にとって、ドル活の第一歩として最適な選択肢と言えるでしょう。

　外貨預金の魅力は、何といってもそのシンプルさです。特別な知識や複雑な手続きは必要なく、銀行の窓口やインターネットバンキングで簡単に始めることができます。また、預金保険の対象ではありませんが、信頼できる銀行に預ければ元本の安全性も高いと考えられます。

　金利面でも外貨預金には魅力があります。日本の円預金の金利は非常に低い水準が続いていますが、アメリカの金利は相対的に高く設定されています。そのため、ドル建ての預金をすることで、円預金よりも多くの利息を受け取ることができる可能性があります。

　さらに、円安が進んだ場合には為替差益も期待できます。例えば、1ドル130円のときに1万ドル分の外貨預金を始めて、1ドル140円になったときに円に戻せば、為替差益だけで約77万円の利益を得ることができます。もちろん、円高になれば逆の損失も発生しますが、これがドル活の基本的な仕組みです。

　外貨預金には普通預金と定期預金があり、それぞれ特徴が異なります。普通預金はいつでも引き出せる自由度の高さが魅力ですが、金利は低めです。定期預金は一定期間引き出せませんが、その分高い金利が設定されています。

　注意すべきは金利と為替手数料です。円をドルに替えるとき、そしてドルを円に戻すときに、銀行は為替手数料を徴収します。この隠れコストである手数料は銀行によって大きく異なるため、外貨預金を始める前にしっかりと比較検討することが重要です。

　外貨預金は、ドル活初心者の方が安心して始められる方法です。まずは少額から始めて、ドルを持つ感覚に慣れることから始めてみてはいかがでしょうか。

2.3 ドル建てFX取引

　FX（外国為替証拠金取引）は、外貨預金よりも本格的なドル活の方法です。少ない資金で大きな取引ができる「レバレッジ」という仕組みを使って、為替相場の変動から利益を得ることを目指します。ただし、リスクも高くなるため、しっかりとした理解が必要です。

　FXの最大の特徴は、レバレッジを利用できることです。例えば、10万円の証拠金で100万円分の取引を行うことができます（レバレッジ10倍の場合）。これにより、少ない資金でも大きな利益を狙うことができますが、同時に損失も拡大する可能性があります。

　また、FXでは「売り」から入ることもできます。円高になると予想する場合は、ドルを売って円を買うポジションを取ることで、円高の恩恵を受けることができます。これは外貨預金にはない柔軟性です。ただし、これは実質借金ですので、長期投資を基本とした本書ではおすすめしていません。

　FXのもう一つの魅力は、スワップポイントと呼ばれる金利差調整額を受け取れることです。金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買う場合、その金利差に相当する金額を毎日受け取ることができます。現在のように日本の金利が低く、アメリカの金利が高い状況では、ドル買い円売りのポジションでスワップポイントを得ることができます。

　FX取引は24時間可能で、わずかな価格変動からも利益を得ることができます。また、取引手数料は外貨預金の為替手数料と比べて非常に安く設定されています。これらの特徴により、より積極的なドル活を行いたい方には魅力的な選択肢となります。

　ただし、FXにはリスクも伴います。レバレッジにより損失が拡大する可能性があり、場合によっては証拠金を上回る損失が発生することもあります。また、相場が予想と逆に動いた場合、強制的にポジションが決済される「ロスカット」という仕組みもあります。

　FXでドル活を行う場合は、まずデモ取引で練習し、十分に仕組みを理解してから実際の取引を始めることをお勧めします。また、余裕資金の範囲内で、無理のないレバレッジ設定で取引することが重要です。

2.4 海外株式・債券投資とその他の方法

　ドル活の方法は外貨預金やFXだけではありません。海外の株式や債券に投資することも、効果的なドル活の一つです。これらの投資により、ドル建ての資産を保有しながら、企業の成長や債券の利息から収益を得ることができます。

　アメリカ株投資は、近年日本でも人気が高まっているドル活の方法です。アップル、マイクロソフト、アマゾンなど、世界的に有名な成長企業の株式を直接購入することができます。

　また、ETF（上場投資信託）や投資信託を利用すれば、少額から分散投資を行うことができます。例えば、S&P500というアメリカの代表的な株価指数に連動するETFを購入すれば、アメリカの主要500社に分散投資したのと同じ効果を得ることができます。

　債券投資も魅力的なドル活の選択肢です。アメリカ国債は世界で最も安全な投資先の一つとされており、安定した利息収入を得ることができます。株式よりもリスクが低く、外貨預金よりも高い利回りが期待できることが多いです。

　最近では、海外の不動産投資信託（REIT）に投資することも可能になっています。アメリカの商業用不動産や住宅に間接的に投資することで、不動産からの収益をドル建てで受け取ることができます。

　これらの投資方法のメリットは、単なる通貨の保有を超えて、投資先の成長から利益を得られることです。ただし、株式や債券には価格変動リスクがあり、元本が保証されていません。投資先の企業が破綻したり、債券の発行体がデフォルト（債務不履行）を起こしたりする可能性もあります。

　海外投資を始める際は、まず投資信託から始めることをお勧めします。プロの運用会社が分散投資を行ってくれるため、個別の銘柄選択をする必要がありません。慣れてきたら、個別株式や債券への投資にチャレンジしてみるのも良いでしょう。