～DX時代を勝ち抜く実践的プロジェクトマネジメント～

はじめに

あなたは今、プロジェクトマネージャという職業に興味を持ち、情報処理技術者試験のプロジェクトマネージャ試験合格を目指していることでしょう。この本を手に取ったということは、単なる資格取得だけでなく、真のプロジェクトマネジメント能力を身につけたいという強い意志をお持ちのはずです。

本書は、従来の試験対策書とは一線を画す、まったく新しいアプローチでプロジェクトマネジメントを学ぶことができる教材です。架空の企業「デジタルイノベーション株式会社」で働く主人公・田中太郎の成長ストーリーを通じて、プロジェクトマネジメントの基礎から応用まで、そして試験合格のテクニックまでを一気に習得できる構成になっています。

なぜ今、プロジェクトマネージャなのか

現代のビジネス環境は、かつてないほど複雑で変化の激しいものとなっています。デジタルトランスフォーメーション（DX）の波は、あらゆる業界に押し寄せ、企業は生き残りをかけて変革を迫られています。このような時代において、プロジェクトマネージャの役割は従来以上に重要になっています。

プロジェクトマネージャは、単にスケジュールや予算を管理するだけの存在ではありません。組織の戦略を実現し、イノベーションを推進し、チームを導いて成果を生み出すリーダーなのです。特にDX時代においては、技術的な知識だけでなく、ビジネス感覚、コミュニケーション能力、そして変化への適応力が求められます。

本書の特徴と革新性

本書が他の参考書と決定的に異なるのは、以下の点です。

まず、ストーリー仕立てで構成されていることです。主人公の田中太郎が、プロジェクトマネージャとして成長していく過程を追体験することで、理論だけでなく実践的な知識とスキルを自然に身につけることができます。机上の空論ではなく、リアルなビジネスシーンでの課題解決を通じて学ぶため、記憶に残りやすく、実際の業務にも応用しやすい内容となっています。

次に、最新のトレンドを完全に網羅していることです。2021年に発行されたPMBOK第7版の内容を完全に反映し、従来の「10の知識エリア」と「5つのプロセス群」から、新しい「12の原則」と「8つのパフォーマンスドメイン」への変更点を詳しく解説しています。また、アジャイル開発手法やDXプロジェクトの特殊性についても、実践的な観点から深く掘り下げています。

さらに、試験対策と実務スキルの両立を実現していることも大きな特徴です。多くの参考書は試験合格のみに焦点を当てていますが、本書では合格後のキャリア形成まで見据えた内容構成になっています。試験に合格することはゴールではなく、プロジェクトマネージャとしての長いキャリアのスタートラインに過ぎません。

2025年度試験の変更点と対策

2025年度のプロジェクトマネージャ試験は、10月12日（日）に実施されます。試験制度自体に大きな変更はありませんが、出題内容においてはPMBOK第7版の影響が色濃く反映されることが予想されます。

特に注目すべきは、従来のプロセス重視の考え方から、原理・原則重視への転換です。これまでのように手順を暗記するだけでは対応できず、プロジェクトマネジメントの本質的な理解が求められるようになります。また、アジャイル手法やDXプロジェクトに関する出題も増加傾向にあり、これらの分野への対策が合格の鍵となります。

本書では、これらの変更点を踏まえた最新の対策を提供します。単なる知識の詰め込みではなく、考える力を養い、どのような問題にも対応できる応用力を身につけることを目指しています。

本書の使い方

本書は4部構成になっており、段階的にスキルアップできるよう設計されています。第1部では基礎知識を、第2部では実践的なスキルを、第3部では高度な応用技術を、そして第4部では試験対策を扱います。

各章は独立して読むこともできますが、ストーリーの流れを理解するためにも、できるだけ順番に読み進めることをお勧めします。また、各章の最後には重要ポイントのまとめと、試験対策のヒントを掲載していますので、復習の際にご活用ください。

プロジェクトマネージャという職業は、決して楽な道のりではありません。しかし、その分やりがいも大きく、組織や社会に与える影響も計り知れません。本書が、あなたのプロジェクトマネージャとしての第一歩を支える良きパートナーとなることを心から願っています。

それでは、田中太郎と一緒に、プロジェクトマネジメントの世界への扉を開いてみましょう。

第1部：基礎編「プロジェクトマネージャへの道」

第1章：プロジェクトマネジメントの世界へようこそ

田中太郎の決断

東京の高層ビル群を見上げながら、田中太郎は深いため息をついた。32歳のシステムエンジニアとして8年間働いてきたが、最近になって自分のキャリアに疑問を感じるようになっていた。毎日同じようなコーディング作業の繰り返し、上司からの指示を待つだけの受け身な姿勢、そして何より、自分が作っているシステムが本当に会社や社会の役に立っているのかが見えないことに、強い閉塞感を覚えていた。

そんな時、大学時代の友人である山田から一本の電話がかかってきた。山田は数年前にプロジェクトマネージャに転身し、今では複数のDXプロジェクトを統括する立場にいる。

「太郎、最近どう？まだコードばかり書いてるの？」山田の声は明るく、充実した日々を送っていることが伝わってきた。

「まあ、そんなところかな。でも正直、このままでいいのか悩んでるんだ」太郎は素直に心境を打ち明けた。

「それなら、うちの会社に来ないか？デジタルイノベーション株式会社って聞いたことある？」

デジタルイノベーション株式会社は、DXコンサルティングを主力事業とする急成長企業だった。従来の大手システムインテグレーターとは異なり、顧客企業の業務変革そのものを支援することで注目を集めていた。

「プロジェクトマネージャのポジションが空いてるんだ。太郎のシステム開発経験があれば、きっと活躍できると思う。ただし、今までとは全然違う世界だから、覚悟は必要だよ」

山田の言葉に、太郎の心は大きく揺れた。プロジェクトマネージャという職種については漠然とした知識しかなかったが、技術者としての経験を活かしながら、より大きな視点で仕事に取り組めるのではないかという期待が膨らんだ。

プロジェクトマネジメントとは何か

面接を経て、太郎はデジタルイノベーション株式会社への転職を決意した。入社初日、人事部の佐藤部長から会社の概要とプロジェクトマネジメントの基本について説明を受けた。

「田中さん、まずはプロジェクトマネジメントとは何かから始めましょう」佐藤部長は、ホワイトボードに向かいながら話し始めた。

「プロジェクトとは、独自の成果物やサービスを創造するために実施される一時的な取り組みのことです。つまり、明確な開始点と終了点があり、特定の目標を達成するための活動の集合体なのです」

太郎は頷きながら、これまで参加してきたシステム開発案件を思い返した。確かに、それぞれに明確な納期があり、特定の機能を持つシステムを作るという目標があった。しかし、それをプロジェクトとして体系的に捉えたことはなかった。

「プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの要求事項を満たすために、知識、スキル、ツール、技法をプロジェクト活動に適用することです。単純に言えば、プロジェクトを成功に導くための総合的な管理活動ということになります」

佐藤部長は続けて、プロジェクトマネジメントの重要性について説明した。現代のビジネス環境では、企業の競争力は新しい価値を創造し続ける能力にかかっている。その価値創造の多くはプロジェクトという形で実行されるため、プロジェクトマネジメントの巧拙が企業の成否を左右すると言っても過言ではない。