「真面目であること」とは、何を意味するのでしょうか。社会で求められる「真面目さ」は、果たして一つの基準で測ることができるのでしょうか。私たちは日々、自分の「真面目さ」をどう選び取るべきか、悩みながら生活しているのではないでしょうか。本記事では、「真面目さ」という曖昧な概念を深く掘り下げ、その軸を自覚的に選び直す方法を探求します。

まず、真面目であることがどのような影響を及ぼし、時に私たちを疲弊させる原因になるのか、その背後にある価値観の変遷や文化的な背景を考察します。さらに、複数の「真面目さ」が交錯する現代社会で、どう自分自身の軸を選び、どの方向に進むべきかを意識的に選択する重要性を論じます。

「真面目であること」は時に重荷になり、時に武器になります。この記事を通じて、自分にとって本当に大切な「真面目さ」を見つけ、その軸をしっかりと持ち続けるための覚悟を持つことが、どれほど大切かを共に考えていきましょう。

はじめに──「真面目」という言葉に潜む曖昧さ

私たちは日々、「あの人は真面目だよね」というような言葉を何気なく使っています。けれども、よく考えてみると「真面目」とは一体何を指しているのでしょうか。

この言葉には、褒め言葉としてのニュアンスもあれば、皮肉めいた使われ方をすることもあります。

本章では、そんな「真面目」という言葉に潜む曖昧さについて、多面的に掘り下げていきたいと思います。

「真面目な人」という評価は本当に一枚岩なのか？

「真面目な人」と聞くと、どんな人物像を思い浮かべるでしょうか。まじめにコツコツ努力する人、ルールを守る人、周囲に迷惑をかけない人……。

けれども、その「真面目さ」も場面によっては重荷と捉えられたり、融通が利かないと評価されたりもします。

つまり「真面目な人」というラベルは一見するとポジティブですが、必ずしも一様に肯定されるわけではないと思うのです。

例えば挑戦が求められる環境では、真面目に現状維持を守る人が「保守的」として批判されることもあります。一方で、秩序を重んじる組織においては、同じ人物が高く評価されることもあります。

「真面目」という言葉が、環境や評価者の立場によってまったく違った意味を持ちうると考えると、とても興味深いのではないでしょうか。

【具体例】

例えばあるベンチャー企業で新規事業を担当していたAさんは、上司から「もっと型破りな発想をしてほしい」と言われ悩んでいました。

Aさんはルールをきちんと守り、丁寧に計画を立てるタイプで、周囲からは「真面目で信頼できる」と評価されてきたのです。しかし、スタートアップの世界では、時にルール破りのチャレンジが求められます。

「真面目さ」が裏目に出てしまう現実に直面し、Aさんは「自分はこの環境に向いていないのでは」と感じるようになったと言います。

こうした体験からも、真面目さとは常にプラスに働くわけではなく、時には適応や変容が必要なのだと考えさせられます。

なぜ「何に対して真面目か」が問われる必要があるのか

真面目な態度自体は、誰にとっても大切な美徳のように思えます。けれども、「何に対して真面目であるか」という視点を持たないと、かえって自分を苦しめてしまうことがあると感じます。

例えば社会から期待される役割に過剰に応えようとした結果、本来自分が大事にしたいことを犠牲にしてしまうケースも珍しくありません。どんな対象に対して真面目であろうとしているのか、それは自分の意志から来ているのか、それとも外側から押しつけられた価値観なのか。

この問いかけを怠ると、知らぬ間に「頑張っているのに報われない」という状況に陥ってしまうリスクが高まるのではないでしょうか。

【具体例】

Bさんは職場で与えられた目標を達成するため、夜遅くまで働き続けました。上司からの期待に応えようとするBさんは、非常に真面目でしたが、気づけば自分の健康や家族との時間をすっかり犠牲にしていました。

「一体何のためにここまで頑張っているのだろう」とふと我に返ったとき、Bさんはようやく、"何に対して"真面目であるべきかを見直す必要性を感じたと言います。

対象を意識せずに真面目さを発揮し続けることが、必ずしも幸せにはつながらないのだと考えさせられるエピソードだと思います。

この記事の目的──「真面目さ」の軸を自覚的に選び直すために

これまで見てきたように、「真面目」という言葉の裏にはさまざまな側面が潜んでいます。私たちが無自覚に持っている「真面目さ」への信頼感を、一度立ち止まって見直してみることは、とても意味があるのではないでしょうか。

この記事では「何に対して、どのように真面目でありたいのか」という軸を、自分自身の手で選び直すことをテーマにしていきます。そして、真面目さが「自分を縛るもの」ではなく、「自分を支えるもの」へと変わるためには、どんな視点が必要なのかを探っていきたいと思います。

ただ単に「真面目なことが良い」とか「真面目さは時に悪い」といった単純な話に留まらず、

もっと多面的に、深く、そして柔らかく「真面目さ」を考え直す機会にできたらと思っています。

【具体例】

Cさんは「きちんとした生き方をしなければ」という思いから、常に周囲の期待に応えようと努力してきました。しかしある日、友人から「それって本当に自分のため？」と問いかけられたことで、自分の軸を持たずに生きてきたことに気づきました。

そこからCさんは、自分が本当に大事にしたい価値観を一つ一つ見直し、自分なりの「真面目さ」を育てていったのです。このように、真面目さを意識的に選び直すことで、自分自身を取り戻すことができるのかもしれません。

「真面目さ」とは何か──定義の曖昧さを掘り下げる

私たちは「真面目な人」と聞くと、何となくわかった気持ちになることがあります。しかし、その「真面目」とは一体何を指しているのでしょうか。言葉としては身近でありながら、その輪郭はとても曖昧なまま、社会で流通しているように思えます。

この章では、「真面目さ」の内実を改めて掘り下げ、漠然としたイメージに隠れている多様な側面をひとつずつ見つめ直していきたいと思います。