目次

相続税法の基礎知識と試験ガイダンス
相続税の課税対象と法定相続人の範囲
相続財産の範囲と評価
非課税財産・債務控除・葬式費用
相続税の計算方法（課税価格の計算と総額計算）
相続税の申告と納付、延納・物納制度
相続税の特例（小規模宅地等の特例など）
贈与税の基礎と相続時精算課税制度
財産評価基本通達の実務
事例問題対策と過去問演習
最新の法改正・実務トピック
総合演習・答案作成テクニック

第1章　相続税法の基礎知識と試験ガイダンス

1-1 税理士試験「相続税法」とは

税理士試験「相続税法」は、税理士資格取得のための選択科目の一つであり、実務においても重要な位置を占める分野です。

相続税法の理解は、相続に関わる多くの実務・コンサルティングの場で不可欠となるため、単なる理論の理解に留まらず、具体的な計算能力や事例への対応力も求められます。

試験の出題傾向

理論問題：約40％（条文理解・趣旨・改正点等）
計算問題：約60％（相続財産の評価・相続税額の計算など）
近年の傾向としては、理論と計算を組み合わせた応用問題が増加

学習戦略

理論と計算を並行学習し、両者の結びつきを意識する
基本事項の確実な暗記
財産評価・特例の具体的な適用パターンの習得
過去問・事例演習を通じて答案作成力を強化

1-2 相続税法の基礎知識

相続税の意義

相続税は、個人が死亡した場合に、その財産を取得した相続人等に課される税金です。

財産の再分配や、過度な資産の集中を防ぐ社会的役割も担っています。

法令体系

相続税法は、「相続税法」（昭和25年法律第73号）を中心とし、施行令・施行規則、関連する民法・財産評価基本通達等と一体的に理解する必要があります。

1-3 相続税の対象となる財産

原則として、被相続人の全ての財産が対象
国内外の財産
遺贈・死因贈与も相続財産に含む

1-4 課税の基本構造

被相続人の死亡→財産取得
相続税の申告・納付義務発生
相続人ごとの課税額を計算

1-5 用語の定義と押さえどころ

被相続人：財産を残す人（亡くなった人）
相続人：財産を受け取る人
遺贈：遺言による贈与
死因贈与：死亡を条件にした贈与

1-6 令和時代の相続税法（法改正・社会動向）

基礎控除額の引下げ
小規模宅地等の特例の見直し
贈与税との一体化議論

1-7 本テキストの使い方

各章の冒頭で理論と計算の要点整理
豊富な図表・例題を掲載
章末に理解度チェック問題
巻末に法改正ポイント・重要用語集

＜章末理解度チェック＞

相続税の課税対象となるのはどのような財産か。
「遺贈」と「死因贈与」の違いは？
相続税法を学ぶ上で押さえるべき関連法令は何か。

第2章　相続税の課税対象と法定相続人の範囲

2-1 相続税の課税対象者

被相続人と相続人

被相続人：相続開始時（死亡時）に財産を所有していた人。
相続人：被相続人の財産を取得する者（法定相続人）および遺贈等により取得する者。

国内・国外の区分

被相続人または相続人が日本国内に住所を有しているかどうかで、課税範囲が異なる（国内財産・国外財産）。

2-2 法定相続人の範囲

民法上の相続人

第1順位：子（直系卑属）
被相続人の子が死亡している場合は、その孫が代襲相続人となる。
第2順位：父母等（直系尊属）
子がいない場合に限り父母・祖父母等が相続人。
第3順位：兄弟姉妹
子・父母等がいない場合のみ兄弟姉妹が相続人となる。
兄弟姉妹が死亡している場合は、その子（甥・姪）が代襲相続人。

配偶者

配偶者は常に相続人となる（上記の順位の者と併存）。

2-3 法定相続分

民法で定められた各相続人の取得割合
配偶者と子：各1/2
配偶者と父母：配偶者2/3、父母1/3
配偶者と兄弟姉妹：配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
子や兄弟姉妹が複数いる場合は、その人数で等分割

2-4 法定相続人の数の意義

相続税法上、「法定相続人の数」は基礎控除額・生命保険金等の非課税限度額・退職手当金等の非課税限度額等の計算で重要
認知された子・養子の取扱い
養子：法定相続人の数に算入する養子の数に制限あり（実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで）

2-5 相続の開始

相続は「被相続人の死亡」によって開始（民法882条）
相続開始地（被相続人の住所地）によって管轄税務署等が決まる

2-6 遺言による相続（遺贈）

遺言により、法定相続人以外の者も財産を取得できる
遺言の方式と効力

2-7 相続放棄・限定承認

相続人は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に「単純承認」「限定承認」「放棄」のいずれかを選択できる
放棄した者は最初から相続人でなかったものとみなされる

2-8 特別縁故者

法定相続人がいない場合、特別縁故者への分与もありうる